皆さんは、今年5月にフロントラインという番組で放映された、ユナイテッド航空の会社更生法適用で何が起こったかという報道を見られましたか? いかに社員の給料や退職金が減らされ、健康保険の負担割合が増えたか。そして、すでに退職している元社員達への年金の支給額までが、大幅に減らされ、それによって、何十年もユナイテッドに勤めて退職した人たちが、職を探さなければならなくなったことなど。ところが、ユナイテッドの会社経営陣の何ミリオンドルものペンションは確保されており、さらには、この件を扱った弁護士事務所には、数億円もの手数料が支払われたとのこと…。
アメリカのペンションシステムは、すでに崩壊しています。1935年に設定されたソーシャルセキュリティー(国民年金)は、金額的に微々たるものであることは周知の事実で、補助的な収入にしかなりません。ソーシャルセキュリティー受給資格年齢も引き上げられる一方であり、ブッシュ政権は、ソーシャルセキュリティー資金の運用を一部個人に任せる運動をしています。引退後、どのように収入を得るかの責任は、100%個人にあり、国や会社に頼ることはできないのは明らかです。
リタイアメントに必要な金額は増えるばかり
50万ドル以上−これが、65歳で引退する人が必要な金額です。企業がペンションから401(K)プランに変更するにつれて、退職までに貯めなければならない金額を意識する従業員が増え、それにつれて、「なぜ、リタイアメントにはこんなに大金が必要なのか?」という疑問が出てきています。
この疑問への簡単な答えは、「寿命が延びたこと」です。長生きすることにより、お金が足らなくなるのです。また、長生きすれば、病院や薬のコストがかかりますが、医療コストも高騰する一方です。フィデリティー・インベストメントが行った2006年3月の調査によると、引退した夫婦が、引退後、雇用主からの医療保険が使えないとすると、自己負担しなければならない医療費(保険料など)で、$20万ドル必要とのことです。しかもこれには、在宅介護、ナーシングホームなど、長期介護の医療費で国のメディケアによってカバーされない費用は含まれていません。
現在のインフレ率4%が継続すると仮定すると、19年後には生活費は2倍となります。今年退職する人のお金の価値は、亡くなるまでに半分に減ることになります。しかも、4%というインフレ率は歴史的に見て低く、今後のインフレ率がもっと高くなれば、事態はもっと悪くなります。
EBRIという企業の福利厚生調査機関の分析によりますと、退職直前のアメリカ人が、401(K)に貯めている金額の平均は、年収の3倍だそうです。退職後、これ以外に収入がないとすると、この401(K)は、7、8年で無くなります。アメリカの平均寿命から計算すると、その後さらに10年か11年の間、この人たちは、ソーシャルセキュリティーに頼って生活しなければならないことになります。
専門家によりますと、安定したリタイアメントを迎えるのに必要な金額は、退職直前の年収の最低15倍ということです。年収$5万ドルの人は、退職する時点で$75万ドル持っていなければならないことになります。Economic
Policy Instituteのクリスチャン・ウェラー氏の発言です:「平均的なアメリカの家庭が、リタイアメントに必要な金額を貯めることができる可能性は、少なくとも今後50年間、ゼロである。」
Do-It-Yourself
退職金プラン
401Kプランは、1970年代のリセッションの時期に、ペンションの新しい形として法制化されました。経済の低迷により、大企業が次々と社員へのペンションの生涯保証を中止するようになりました。「The
Great 401(k) Hoax」という本の中で、著者が次のように書いています。「企業が恐れたのは、ペンションプランにかかる費用ではなく、将来のペンション負担による、経営の圧迫だった。多くの企業にとって、長期に渡って退職者に支払わなければならないペンションは、恐ろしいブラックホールであった。」
今日、「Do-It-Yourself」しかし、「明日まで存在するかどうか先の見えない」リタイアメントの状況下では、私たちのほとんどにとって、リタイアメントは不安で不確実な、暗い将来に思えます。401Kプランは、個人個人が資金を運用する、まさに、「Do-It-Yourself」の退職年金プランですので、株式市場の動きに運命を任せることになります。市場が44%も落ち込んだ2年半の間に、およそ7.7兆ドルもの金額が失われました。
401Kプランでは、企業側からも社員のアカウントに何割かを積み立ててくれるのが普通ですが、従来のペンションプランでは平均、賃金の6、7%を企業側が入れるのが普通だったのに対し、401Kの平均は2%にとどまっています。
世間を騒がせた、エンロンのように、ほとんどの大企業では、社員に自社の株に投資するように強く勧めます。エンロンの場合、社員、レイオフされた元社員、退職者の多くが、退職金として貯めたお金のほとんどを失いました。
調査機関によって発表される401Kプランの残高は、2000年度、平均$49000ドルと発表されました。しかし、この数字は、一部の高給社員の残高によって高くなっているもので、401Kプラン全体の44%のアカウントの残高は、$10000以下となっています。
これらの、一般労働階級の人々の苦悩をよそに、企業のトップは、「ゴールデンパラシュト」を保証されています。ファイナンシャル・スキャンダルで大問題を起こして倒産した企業の幹部でさえ、リタイアメントの不安は全くないといえます。エンロンの場合、ジェフリー・スキリング氏は、$78億ドルの退職金を手にしました。一方で、レイオフされたエンロンの従業員達が受け取った金額は、勤続年数にかかわらず、$4500ドルほどでした。
社会に貢献するはずの大企業が、世間のみならず自社の社員をこのようなかたちで欺き、しかも、法の裁きを受けることなく、大金を手にして去る−何か、間違っているのではないでしょうか? ほとんどの一般庶民のリタイアメントが、投資について必要な教育やアドバイスを受けることができないまま、自己責任の一言で処理されるのは、間違いではないでしょうか?
401Kプランや、その他の個人のリタイアメントプランについて、皆さんのご意見や、ご希望、ご相談を受け付けております。お気軽に、トレーシー田口までご連絡ください。